名古屋大学 福井識人先生らとの共同研究の成果がJ. Am. Chem. Soc.誌に掲載されました。
The results of our joint research with Dr. Norihito Fukui at Nagoya University have been published in J. Am. Chem. Soc.
名古屋大学 福井識人先生らとの共同研究の成果がJ. Am. Chem. Soc.誌に掲載されました。
The results of our joint research with Dr. Norihito Fukui at Nagoya University have been published in J. Am. Chem. Soc.
私たちの研究するラダーポリマーがどのような応用可能性があるかについて、その一例をご紹介します。

これまでのプラスチック材料は、「壊れたら交換」「使い捨て」という考え方のもと、大量生産・大量消費を前提に社会に広く普及してきました。その一方で、廃棄物の増加や環境汚染といった問題が顕在化しています。こうした背景から、近年は環境への影響を抑えつつ、長期間安心して使える材料の開発が重要になっています。
高耐久・長寿命が期待されるラダーポリマーは、分子がはしご状につながった安定な構造をもち、非常に壊れにくいことが特長です。この性質から、簡単に交換や修理ができない宇宙材料をはじめ、海底ケーブルや地下配管材、歴史的建造物の長期補修材料、さらには体内に埋め込む医療材料など、幅広い分野での応用が期待されています。加えて、使用後に確実に回収・再利用する技術と組み合わせることで、資源を無駄にせず、環境負荷を抑えた持続可能な材料としても注目されています。

私たちの身のまわりにある工場や発電所では、二酸化炭素(CO₂)や窒素、水素など、さまざまな気体が大量に使われています。これらを分離・精製・回収するために、これまで蒸留や溶液吸収といった膨大なエネルギーを必要とする方法が用いられてきました。しかし、CO₂排出やコストの増大が課題となっています。
そこで注目されているのが、薄い膜を通すだけで必要な気体を選び分ける「気体分離膜」です。私たちの研究室では、分子がはしご状につながった安定構造をもつラダーポリマーに着目しています。この材料は分子レベルで通り道の大きさを制御できるため、高い選択性と透過性を両立した次世代気体分離膜への応用が期待され、脱炭素社会や水素社会の実現に貢献できると考えています。
CPL材料
私たちの研究室では、「光のねじれ」までデザインできる発光材料の研究を行っています。普通の蛍光は、光の明るさや色は変えられても、光の揺れ方(偏光)はあまり意識されていません。しかし、光の振動の向きがらせん状に回転する「円偏光」という状態があり、右巻き・左巻きの2種類が存在します。CPL 材料の特徴は、「光の色や明るさ」だけでなく右巻き・左巻きという“利き手”までコントロールできることです。
この性質を活かして、さまざまな分野への応用が検討されています。
メガネなし 3D ディスプレイ
右巻きと左巻きの円偏光をそれぞれ左右の目に送り分けることで、メガネをかけなくても立体的に見えるディスプレイを実現できます。
CPL を出す発光材料を使えば、薄くて省エネルギーな次世代 3D ディスプレイや VR/AR デバイスにつながると期待されています。
偽造防止インク・情報の暗号化
見た目はほとんど同じインクでも、「右円偏光だけで見える模様」「左円偏光でだけ読める文字」を印刷することができます。
これを利用して、紙幣や身分証明書の高度な偽造防止技術や、専用フィルターを通さないと読めない秘密の QR コード・バーコードなどへの応用が考えられています。
バイオイメージング・キラルセンシング
生体分子のまわりで CPL を発するプローブを設計すると、「どのくらい右利き・左利きか(キラリティ)」の情報を光として読み取ることができます。
これにより、タンパク質や糖鎖などの立体構造を調べる高感度なイメージング技術や、医薬候補分子のエナンチオマーを識別するキラルセンシングへの応用が期待されています。
私たちの研究室では、ヘリカルラダーポリマーを用いて
「分子のらせん構造 → 光のらせん(CPL)」へと情報を写し取る材料を設計し、こうした応用につながる新しい発光材料の開発に取り組んでいます。
ヘリセンっていうのは、いくつかの芳香環(ベンゼン環)がくっついてできた特殊な化合物なんだ。普通の分子とはちょっと違って、芳香環がギュッと縮んで絡み合うせいで、分子全体がねじれて「らせん」みたいな形になるんだよ。このねじれた形がポイントで、光や電気、磁気に対して特別な性質を持つんだ。だから、光学材料とか、センサーや触媒とか、いろんなところで使える可能性があるんだ。
「無欠陥ラダー化」っていう反応を使えば、ヘリセンの骨格をもっと複雑にしたりすることもできるんだ。これで、ヘリセンがいくつもくっついた「多重ヘリセン」や、普通のヘリセンよりも直径が大きな「拡張ヘリセン」なんかを作れるようになったんだよ。例えば、アントラセンっていう物質を使ってM字型のトリプル型拡張ヘリセンを合成することに成功して、これがものすごくねじれていて、特別な光(円偏光発光)を出すことがわかったんだ。しかも、この光の性能は、今までのヘリセンの中でも最高レベルに良いんだって!最近は、ヘリセンを使った新しいタイプのポリマー、つまりプラスチックみたいな材料も作っていて、これがどんな性質や機能を持っているのか、研究を進めているんだよ!
僕たちは『乗り継ぎ型メリーゴーランド(T-MGR)重合』っていう新しい重合方法を開発したんだよ。これは、連鎖重合と超分子重合が交互に進む仕組みなんだ。この方法を使って、生体に似た一次元状に伸びた超分子集合体を作ることに成功したんだ。この集合体は、高分子の端と端が共有結合じゃなくて、非共有結合っていう弱い力でつながってるんだ。さらにね、この超分子鎖が伸びていく途中で、すごく強い不斉増幅が起こることがわかったんだ。不斉増幅っていうのは、簡単に言うと分子が左右どちらかに片寄ってねじれやすくなる現象なんだよ。実際に、超分子鎖が勝手に綱引きの綱のようにねじれて、それがさらにねじれながら集合して三次元的なねじれ構造を作るんだ。しかも、このねじれた構造(キラリティ)の情報を他の化合物に伝えることにも成功したんだ!例えば、普通の色素分子って、左右の区別ができないんだけど、そこにこのキラリティの情報を伝えることで、円偏光発光っていう特別な光の性質を持たせることができたんだ。この技術は、安い材料から高性能な素材を作るための新しい方法として、最近すごく注目されているんだよ!
さらに、この立体構造を制御する技術は、分子を分けたり認識したりする材料にも応用できるんだ。たとえば、特定のキラルユニットを使って無欠陥ラダー化をすると、分子認識にぴったりなナノサイズの空孔を作ることができるんだよ。その空孔の内側はπ電子っていう特別な電子で覆われるから、その中で他の分子と相互作用することもできるんだ。これが分子をうまく捕まえる「ホスト材料」として使えるんだよね。実際にこの技術を使って、HPLCっていう装置を使って構造が似ている分子を分ける実験をしてみたら、いろんな種類の化合物をきれいに分離することができたんだよね。今は、こういう技術を使って、生き物が示すような高度な機能を持った材料、もしくはそれ以上の材料を作り出そうと、研究を進めているところなんだ。これ、未来の材料開発にすごく役立つんだよ!
僕たちは、分子の立体構造を自由にコントロールして、その結果として生まれる特別な機能を見つけ出す研究をしているんだ。たとえば、右回りか左回りのどちらか一方の光を選んで発光できる「円偏光発光(CPL)材料」っていうものがあって、これが次世代の光学材料として注目されているんだよ。こういう材料は、3Dディスプレイとか偽造防止の塗料、医療診断、さらには量子暗号通信なんかにも使える可能性があるんだ。最近、このCPL材料の開発が盛んになっていて、円偏光を発光するキラルな(つまりねじれた)高分子がたくさん報告されているんだ。CPL材料の性能を測るときには、「g値」っていう指標があって、これは分子が持っている磁気と電気の性質によって決まるんだよ。この性質は分子の構造によって変わるんだけど、今まではその構造をうまく制御する方法がなかったんだ。だから、どんな構造が良いのかもわからず、試しに作ってみてうまくいけばラッキーっていう感じの研究が多かったんだよ。
でも、僕たちは長さの違う「アルキレンジオキシスペーサー」っていうものを使って、ビナフチル骨格を持ったヘリカルラダーポリマーを作り出すことに成功したんだ。このポリマーでは、スペーサーの長さを変えることで立体構造や性質を細かく調整できるんだよ。結果として、すごく明るく発光する上に、g値も高い、優れた円偏光発光性のポリマーができたんだ。これによって、分子レベルから効率的にCPL材料を作る新しい方法を確立できたんだよ。この技術は、次世代の光学材料の可能性を大きく広げる成果になると思うんだ。
ポリマーって小さな分子(モノマー)がつながってできてるんだけど、普通のポリマーだと、そのつながってる部分同士が自由に回転できちゃうんだ。だから、ほとんどの場合、形がぐちゃぐちゃな『ランダムコイル』っていう構造になっちゃうんだ。でもさ、DNAとかタンパク質って、特別な形を作ることで、いろんなすごい機能を発揮するんだよ。たとえば、認識とか触媒とか、情報伝達とか、運動とかね。だから、ぐちゃぐちゃな状態って、あんまりいいことじゃないんだ。
でもね、ラダーポリマーっていうのは、2本以上の結合でしっかりつながっているから、自由に動き回ることができなくて、構造がすごく安定するんだよ。そのおかげで、ラダーポリマーは普通のポリマーよりも強くて、熱や化学薬品にも強かったり、さらには電気を通しやすかったり、気体を分ける特性があったりするんだ。しかも、ラダーポリマーはきれいな立体構造を作りやすいっていうすごいところもあるんだよ。でもね、これまではうまく作る方法がなかったから、ちゃんとしたラダーポリマーはほとんど報告されていなかったんだ。
でも最近、僕たちは『無欠陥ラダー化』っていう新しい反応を開発して、これで欠陥のないラダーポリマーを作ることに成功したんだよ。しかも、この反応はとても選択的で効率が良く、いろんな材料に使えるんだ。さらに、分子のデザインに『キラリティ』っていう、左右にねじれる性質を取り入れることで、ラダーポリマーの立体構造を自由自在にコントロールできるようになったんだ。この技術を使えば、らせん状とか、ねじれたリボン状とか、平らな構造とか、いろんな形の高分子を自由に作れるんだ。これってつまり、研究者のひらめき次第で、もっといろんな立体構造が作れる可能性があるってことなんだ。この技術は、ポリマーの形や性質、機能の関係を調べるのに役立つし、今は計算科学とも組み合わせて、ラダーポリマーの特性を活かした新しい未来の材料を開発しているところなんだよ!
ポリマーって聞いたことあるかな?身の回りのもの、たとえばプラスチックとかゴムとか、そういうものに使われている材料なんだよ。ポリマーは、生活に役立つものから、未来の技術に使われる先端的なものまで、いろんなところで活躍しているんだ。井改研究室では、そんなポリマーの中でも、これまでにない特別な構造を持ったものを研究しているんだよ。
特に注目されているのが『ラダーポリマー』っていうものなんだ。このラダーポリマーは、普通のポリマーとちょっと違ってて、はしごみたいな形をしているんだ。たとえば、ポリエチレンやポリスチレンっていう普通のポリマーは、モノマーという小さなパーツが1本の結合でつながってできているんだけど、ラダーポリマーは2本以上の結合でしっかりつながっているのが特徴なんだ。このラダーポリマーのはしご構造をうまく使って、井改研究室では、特別な骨格と立体的な形をデザインして、普通のポリマーではできないようなすごい性能や、新しい機能を持ったポリマーを作り出そうとしているんだよ!

